当店は、ティーハウスではありますが、開店当初、
スコーンが定番メニューにありませんでした。
理由は簡単、スコーンは製法が簡単なだけにごまかしがききません。
開店までに美味しいスコーンのレシピを完成することができなかったのです。
それと開店準備の中で、スコーンを作りすぎて、
関係者が食傷気味になってしまったというのもあります。
毎日のように試作品を食べ続け、
スコーンについて考えるだけで胸焼けが・・・
しかし、ティーハウスたるもの、スコーンなしで済むはずありません。
お客様に、「なぜスコーンをおかないのですか?」
と問われることも多く、
面目なく思うシーンがしばしばありました。
そこで、スコーンレシピの開発を再開し、
ようやく最近になって、合格点に近いスコーンが店頭に並ぶようになりました。
ちなみに、開店後に何度か作ったもののなかには、ときとして
目もあてられないような失敗作が混じっていました。
ごめんなさい。それにしても、スコーンとは不思議な食べ物です。
好きな方は大好き、興味の無い方はまったく興味ありません。
テイクアウトも含め売れるときはあっというまに売れてしまいます。
でも、売れないときはまったく売れず、スコーンの山がこんもりと残ります。
スコーンのためにあしげく通って下さるようになるお客様もいらっしゃいます。
一方で、ないと踵を返して帰ってしまう、
逆にスコーンしかないから帰ってしまうお客様も。
ティータイムの人間行動にかくも影響力を持つとは、
丸いきつね色のシンプルなお菓子にしては、
ちょっと生意気です。
スコーンは忙しいイギリスの一般家庭でパンを作る時間を省くために、
作られるようになった簡易パンと言われます。
アフタヌーンティーの習慣に取り入れられ、
今や欧州、アメリカ、日本、その他アジア諸国で
お菓子の1つとして受け入れられています。
時代を超え、国境を超えて生き続け、愛され続ける
「何か」が、このシンプル極まりないお菓子の中に
あるいはシンプル極まりないからこそかもしれませんが、
確かに詰まっているようです。