2014年3月31日月曜日
黒糖のケーキ
当店のケーキで私が愛してやまないものの一つに、黒糖のケーキがあります。
食べると思わず陶然となってしまうケーキ。
すばらしいのはまさに黒糖そのもので、これはもう他に代えがありません。
宮崎県日南でつくられており、雑味がなく、それはそれは澄んだきれいな味なのです。
ひとかけ口に含むと、さらりとした甘みの中に、ミネラル感やほのかな酸味も感じられ、美しい余韻が長く続きます。日南の明るい青い海や、潮風の吹き渡るサトウキビ畑が目に浮かぶよう。砂糖を食べてワインのようにしみじみとテロワールを感じ、恍惚となるなんて初めてです。
5年以上寝かせたものと、昨年末にできたばかりのものを食べ比べましたが、新しいのはフレッシュな風味。古いものはいっそう優しく、深い味がしました。
工業製品のような砂糖も多いなか、これは、土から生まれ、人の手でつくられたものなんだな、と感じられます。
この黒糖でつくるケーキは、食べても、あーまた糖分とっちゃった、なんて罪悪感は(あまり)ありません。良質な養分を吸収した時の、すがすがしい気分になります。
他に何も加えないシンプルなパウンドケーキも格別ですが、スペシャルバージョンもございます。
『黒糖と干し柿』のケーキです(冒頭の写真)。
干し柿も特別なもので、福井県特産の燻した干し柿です。これをラム酒に漬けて使います。
スモーキーな干し柿と、コクがありながら、さらっとキレのある黒糖の相性は、これ以上ないような組み合わせ。お客さまにもとても評判が良いです。
ただ、干し柿も黒糖も少量生産で、入手できるのも1年で限られた期間だけ。しかもお高い。今、原価を思い出してドキドキしてきました。
気軽にどしどし作れないのですが、これからも大切に焼き続けていきたいケーキです。
あと1、2回焼いたら干し柿は終了。その後はまた秋以降となります(黒糖のケーキはまだ大丈夫です)。